【放射線】
放射性物質から出てくるアルファ線(α線)、ベータ線(β線)、ガンマ線(γ線)、中性子線等を総称していう。
  [アルファ線]
放射線の一種でヘリウムの原子核。物質を透過する力は弱く、薄い紙一枚程度でさえぎることができる。
  [ベータ線]
放射線の一種で原子核から飛び出す電子。物質を透過する力はアルファ線より強く、ガンマ線より弱い。
  [ガンマ線]
放射線の一種で原子核から出る電磁波。物質を透過する力はアルファ線やベータ線に比べて強い。



放射線の種類と透過力

【希ガス】
周期律0族のヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドンの6元素を総称していう。この6元素は大気中の存在量が非常に少ないので希ガスと呼ばれる。この元素は非常に安定しており他の元素と容易に化合しない性質である。原子炉内では、核分裂生成物として放射性のクリプトン、キセノン、アルゴン等が生まれる。


【クリプトン】
原子番号36、原子量83.80の元素で希ガスの一種。核分裂生成物として原子炉内で生成されるクリプトン85は半減期が約11年である。


【宇宙線】
宇宙から非常に速い速度で地球に飛び込んでくる放射線。人は地上で年間平均約0.39ミリシーベルトの宇宙線を受けている。


【放射能】
原子核が別の原子核に変わりアルファ線、ベータ線、ガンマ線及び中性子線等の放射線を出す能力をいい、その強さをベクレル(Bq)で表す。放射能を持っている物質を放射性物質という。


【半減期】
放射性物質は放射線を出すことにより安定した状態になる。このため放射性物質(放射能)の量は時間が経つにつれて減少する。この放射性物質(放射能)の量が半分になるまでの時間を半減期という。半減期は放射性物質によって異なる。
 

 
放射性物質
半減期
ストロンチウム-90
約29年
セシウム-137
約30年
コバルト-60
約5年
ヨウ素-131
約8日
放射性物質の半減期
 
放射性物質と半減期



   

【環境放射線】
人間を含めた生物の生活環境内にある放射線のことで、空間放射線及び環境試料の放射能を総称していう。
 
   
【自然放射線】
宇宙線及びウラン、ラジウム、トリウム、カリウムのような自然界にある放射性物質からでる放射線をいう。その量は地質によって放射性物質の種類や量が異なるため、地域差がある。例えば花崗岩の多い地域に比べると、自然界にある放射性物質の含有量の少ない関東ローム層の地域は、自然放射線の強さは弱くなる。また、宇宙線の強さは高度によって変わり、上空にあがるほど強くなる。
 
   
【人工放射線】
自然界にある放射線に対して、核実験や原子炉などで人為的に作られた放射性物質からの放射線。
 
 



【空間放射線】
 
モニタリングポスト
 
モニタリングポイント
空間に存在する放射線のことであり、私たちの周りには大地、大気からの放射線や、宇宙線などによる自然放射線が存在している。自然放射線の量は、地質や地形の違いなどにより場所毎に異なるため、測定地点によって違う値をとる。また、同じ場所でも降雨などの気象条件により変動する。特に雨による影響が大きく、雨が降ると放射線量の値は一時的に高くなることがある。これは、大気中に浮遊している天然放射性物質が雨などと共に地上に落ちてくるためである。今までに観測されたデータの最高値はこのような理由で上昇が見られたものである。このように、データの値は観測地点毎に一定ではなく、ある程度の範囲を持つ。川内原子力発電所の周辺地域では、モニタリングポイントで3か月間積算線量(単位:mGy)を、モニタリングポスト、ステーションやモニタリングカーで線量率(単位:nGy/h)を測定している。

雨による変動事例



【環境試料】  
放射性物質の分布の把握や蓄積傾向の把握等を目的として放射能分析を行うために採取する農畜水産物や陸水、大気中浮遊じん、海水、陸土、海底土等のこと。
環境試料の放射能分析↑


【環境試料の放射能分析】
環境試料中に含まれる放射性物質の種類と量を測定すること。測定値は物質の単位体積又は単位重量あたりで表す。人工放射性物質であるセシウム-137、コバルト-60、ストロンチウム-90、ヨウ素-131を主な対象にして実施している。川内原子力発電所の周辺で、1年間当たり、県は、海洋試料14種類延べ19試料、陸上試料21種類延べ60試料について、九州電力(株)は、海洋試料10種類延べ22試料、陸上試料18種類延べ55試料について放射能分析を実施している。

環境試料に含まれる放射性物質の測定では、まず、試料を採取し、試料の乾燥・灰化・濃縮などの前処理を行ったあと、各種の放射線計測器を使用して測定します。



【モニタリング】
環境放射線を連続的又は定期的に測定・監視すること。原子力発電所では、運転に伴い放射性物質が発生し環境にはできるだけ影響がないように管理して放出している。県では、川内原子力発電所周辺の人々の安全の確保と環境の保全を図るため、発電所の周辺地域において常に環境放射線の監視(モニタリング)を行っている。
 
モニタリング


【モニタリングポイント】
3か月間の積算線量を測定するための野外固定施設で、蛍光ガラス線量計という積算型の放射線測定器を備えている。川内原子力発電所の周辺に、県が25地点、九州電力(株)が22地点、合計47地点設置している。
       
モニタリングポイント
 
蛍光ガラス線量計
 
測定装置
 
【蛍光ガラス線量計】
放射線を受けたある種のガラスに紫外線を当てると発光する(ラジオフォトルミネッセンス)原理を利用した放射線測定器。受けた放射線の量に比例して光を出し、繰り返し使用できる。モニタリングポイントでの積算線量の測定に使用している。



【モニタリングステーション】  
モニタリングポストより重装備の野外固定施設で、空間放射線量自動連続測定装置、大気中浮遊じん連続捕集装置等を備えている。川内原子力発電所の周辺に、県が1局、九州電力(株)が2局、合計3局設置している。
 
小平局



【モニタリングポスト】    
空間放射線量自動連続測定装置等を備えた野外固定施設。川内原子力発電所の周辺に、県が21局、九州電力(株)が4局、合計25局設置している。
   
久見崎局
 
湯島局
   
 



【放水口ポスト】    
発電所放水口の海水中の放射線(計数率)を測定するための自動連続測定装置を備えた野外固定施設で、川内原子力発電所の放水口に1か所設置している。
   
放水口ポスト
(検出器は海水中にあります)
 
測定部



【環境放射線監視テレメータシステム】
環境放射線監視テレメータシステムは、川内原子力発電所周辺の測定局と県環境放射線監視センター及び県庁をVPN回線、携帯電話回線、衛星回線で接続し、放射線を24時間絶え間なく監視するコンピュータシステムである。このシステムでは、発電所の周辺に設置している28の測定局をはじめ発電所の排気筒モニタや放水口ポストのデータを2分毎に収集し、異常がないか常に監視している。これらのデータはサーバで処理されるとともに薩摩川内市(11)、いちき串木野市(2)、阿久根市(1)の14か所の表示装置やインターネットで公開されている。また緊急時に備え、県原子力防災センターや災害対策本部室へもリアルタイムで測定データを送信している。



【モニタリングカー】  
モニタリングステーション、モニタリングポスト等の固定施設に対して、いつでも必要な場所に移動して空間放射線量等の測定が可能な移動測定車。



【可搬型モニタリングポスト】
 

モニタリングステーション、モニタリングポスト等の固定施設に対して必要な箇所に配置して空間放射線量の連続測定を行う設備。測定データは携帯電話回線を利用したテレメータシステムにより環境放射線監視センターに収集される。



【サーベイポイント】
モニタリングカーや、サーベイメータを用いて空間放射線量を測定する地点。


【サーベイメータ】
携帯用の放射線測定器でアルファ線、ベータ線、ガンマ線及び中性子線用のサーベイメータがある。方式としては電離箱式、GM計数管式、シンチレーション式、半導体式などがある。
     
GM計数管式
サーベイメータ
(ベータ線用)
 
シンチレーション式
サーベイメータ
(ガンマ線用)
 
電離箱式
サーベイメータ
(ガンマ線用)
 
比例計数管式
サーベイメータ
(中性子線用)



【ポケット線量計】
   

被ばく線量を測定するための小型線量計。ポケットに入る程度の大きさである。


【積算線量】
空間積算線量のことで、通常3か月間の空間放射線量の積算量[mGy](ミリグレイ)で表す。モニタリングポイントで測定している。


【線量率】
空間放射線量率のことで、単位時間あたりの空間放射線量をいう。通常1時間当たりの放射線量[nGy/h](ナノグレイ/時)で表す。川内原子力発電所周辺に設置している28の測定局において、24時間絶え間なく測定している。


【Gy(グレイ)】
物質における放射線のエネルギー吸収量を表す単位。空間放射線の量を表す単位として、X線及びガンマ線の空気吸収線量が用いられる。物質1kgあたり1ジュールのエネルギー吸収があるときの放射線量を1グレイ(Gy)という。1ミリグレイ(mGy)は1グレイ(Gy)の1000分の1、1ナノグレイ(nGy)は1グレイの10億分の1である。人体への影響を表すシーベルト(Sv)は、一般的にグレイ(Gy)に0.8をかけると換算できる。


【Sv(シーベルト)】
放射線の人体に与える影響を表す単位。人間は1人あたり平均して1年間に約2.4ミリシーベルト(mSv)の自然放射線を受けている。1ミリシーベルト(mSv)は1シーベルト(Sv)の1000分の1である。

自然放射線の種類線量 ミリシーベルト/年(mSv/年)
宇宙から飛来してくるもの0.39
土壌から放出されるもの0.48
食物を通じ体内から照射されるもの0.29
空気中のラドン等の吸収によるもの1.26
合計約2.4


【単位の接頭語】
数値が非常に小さい場合、例えば0.000000001グレイと書くのは間違いやすいので接頭語を使って1nGy(ナノグレイ)と書く。

単位の接頭語

倍数
記号
読み
1018
E
exa
エクサ
1015
P
peta
ペタ
1012
T
tera
テラ
109
G
giga
ギガ
106
M
mega
メガ
103
k
kilo
キロ
102
h
hecto
ヘクト
101
da
deca
デカ
倍数
記号
読み
10-1
d
deci
デシ
10-2
c
centi
センチ
10-3
m
milli
ミリ
10-6
μ
micro
マイクロ
10-9
n
nano
ナノ
10-12
p
pico
ピコ
10-15
f
femto
フェムト
10-18
a
atto
アット


【Bq(ベクレル)】
放射能の強度又は放射性物質の量を表す単位。1秒間に1個の原子核が崩壊して放射線を出す物質の放射能の強度、又は放射性物質の量を1ベクレル(Bq)という。1ミリベクレル(mBq)は1ベクレルの1000分の1、1メガベクレル(MBq)は1ベクレルの100万倍である。


【cpm(カウント/分)】
1分間当たりに放射線測定装置で測定される放射線の数を表す。


【セシウム-137 137Cs】
ウランなどの核分裂で生成する放射性物質であり、半減期は約30年で、ベータ線とガンマ線を放出する。地上にあるセシウム-137のほとんどは過去の原水爆実験で発生したものである。


【コバルト-60 60Co】
原子炉の中で、安定元素のコバルト-59に放射線の一種である中性子が吸収されて生成する放射性物質。半減期は約5年で、ベータ線とガンマ線を放出する。


【ストロンチウム-90 90Sr】
ウランなどの核分裂で生成する放射性物質であり、半減期は約29年で、ベータ線を放出する。地上にあるストロンチウム-90のほとんどは過去の原水爆実験で発生したものである。


【ヨウ素-131 131I 】
ウランなどの核分裂で生成する放射性物質であり、半減期は約8日で、ベータ線とガンマ線を放出する。


【トリチウム(三重水素) 3H】

宇宙線や原子炉内の核分裂などによって生成する放射性物質であり、半減期は約12年で、ベータ線を放出する。宇宙線によっても生成されるので自然界にも存在する。



【ウラン(ウラニウム)】
元素記号はU。原子番号92。天然に存在するものの質量数は234、235および238であり、天然に存在する元素の中で最も重い。