放射線や放射性物質は人間が原子力の利用を開始したことによって初めて生まれたものではありません。人間は有史以前から様々な放射線や放射性物質に囲まれて生活してきているのです。
地殻を構成している岩石や土砂などにはウラン、トリウム、ラジウムなどの放射性物質が含まれています。また、空気中にはこれらの元素から生じるラドンなどの気体状の放射性物質が存在しています。これらは絶え間なく放射線を放出しています。さらに、宇宙のかなたから飛来する宇宙線と呼ばれる放射線も地球上に降り注いでいます。このように、自然界に存在する放射線を自然放射線と呼んでいます。放射線が人体に与える影響を表す単位としてシーベルトがありますが、人間は1人あたり平均して1年間で約2.4ミリシーベルトの自然放射線を受けています。その内訳は宇宙線などの空間から飛来してくるもの0.39ミリシーベルト、大地から放出されるもの0.48ミリシーベルト、日常摂取する食べ物によるもの0.29ミリシーベルト、空気中のラドンなどの吸入によるもの1.26ミリシーベルトです。自然放射線は地質の違いなどによって、場所によりその強さが異なります。発電所の周辺に設置している空間放射線測定局データが、地点によって異なるのはこの自然放射線の違いによるものです。